「幸せって心を蝕むのよ。あたたかく包んで、麻痺させて、私を溶かしていくの。」

とある北の港町。スナック「虹」に集う人々。マスターの虹郎、近所で旅館を営んでいる五十嵐夫婦。そして、夏子。夏子はふらりとこの街にやってきて住み着いた、過去が謎の女性。しかし持ち前の人を巻き込むほどの明るさで、この街に馴染んでいた。

ある日、夏子の息子、涼太が訪ねてくる。

「お久しぶりです…」「…あなた、涼太？」夏子と涼太の間にある過去は、さざ波のように、街の人々の心を揺らし、やがてその波が大きな変化に…

自由を標榜する夏子の生き方は、涼太の人生にどんな意味をもたらすのか。